【技人国ビザ更新②】転職後の更新申請解説(就労資格証明書の有無が鍵)
- しずか 若林
- 2 日前
- 読了時間: 6分

皆さんこんにちは。行政書士の若林しずかです。
前回は、同じ会社で働き続ける場合の更新ポイントについて解説しました。今回は、「転職をした場合」の更新手続きに焦点を当てます。
結論から申し上げると、転職を伴う更新は、同じ会社で更新する場合と比べて審査の難易度が格段に上がります。 なぜなら、入管はあなたの在留状況だけでなく、「新しい会社と仕事内容」についても、新規のビザ申請とほぼ同じレベルで審査し直すからです。
要注意!退職後の「空白期間」が更新審査に与える影響
転職を考える上で、まず知っておかなければならないのが、いわゆる「3ヶ月ルール」です。法律上、正当な理由なく、許可された活動(つまり仕事)を継続して3ヶ月以上行っていない場合、在留資格が取り消される可能性がある、という非常に厳しい規定が存在します。
しかし、3ヶ月以上の無職期間があっても、在留資格が直ちに取り消されることはあまりありません。その後運良く次の就職先が見つかって、しばらく働いてから更新時期を迎えるというケースが多いのが現実です。 このケースが要注意なのです。
たとえ在留資格が取り消されていなくても、「過去に3ヶ月以上の空白期間があった」という事実は、更新申請の審査において重大なマイナス評価となり得るのです。
したがって、もし再就職までに3ヶ月以上の空白期間が生じてしまった場合は、更新申請の際に、その期間中にどのような就職活動をしていたのか(例:応募した企業リスト、面接の記録など)、なぜ就職先がなかなか決まらなかったのか、といった「正当な理由」を理由書で具体的に説明し、可能な限りその疎明資料を添付することが不可欠です。
転職者が見落としがちな「住民税」の罠
もう一つ、転職時によくある重大なリスクが「住民税の滞納」です。
会社に勤めている間、住民税は給与から天引き(特別徴収)されることがほとんどです。しかし、会社を退職すると、この天引きが止まり、自分で市役所(区役所)から送られてくる納付書を使って支払う「普通徴収」に切り替わることがよくあります。
この切り替えに気づかず、自宅に届いた納付書を放置してしまい、意図せず住民税を滞納してしまうケースが後を絶ちません。
税金の滞納は、在留資格の更新審査において最も厳しく見られる項目の一つです。転職された外国人ご本人はもちろん、新しく受け入れる事業主の方も、この点をしっかりフォローしてあげることが、将来の安定した雇用を守る上で非常に大切です。 なお余談になりますが、退職後は会社の社会保険からも脱退しますので、次の会社に入るまでの空白期間は、国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。この手続きをしないまま、年金と健康保険料の未納期間が生じた場合、どうなるのでしょうか。この点2025年7月現時点の運用では、就労の在留資格更新審査においては特別不利益な扱いは受けていません。しかし、将来的に永住申請をする場合には、この未納は不許可の理由になりますので、健康保険と年金についても注意が必要です。
更新時の審査はどう変わる?就労資格証明書の有無が分かれ道
転職後の更新審査は、事前に「就労資格証明書」を取得していたかどうかで、その内容と難易度が大きく変わります。
ケース1:事前に「就労資格証明書」を取得していた場合
これが最も安全かつスムーズなパターンです。「就労資格証明書」とは、新しい仕事内容が現在の在留資格で問題ないことを、事前に入管が審査し、証明してくれる公式な「お墨付き」です。
この証明書を提出すれば、新しい仕事の適法性については既に審査済みと見なされるため、更新手続きは非常に円滑に進みます。
【注意点】
ただし、「就労資格証明書」はあくまで「仕事内容」の適法性を証明するものです。ご本人の在留状況(納税義務の履行や素行の善良性など)は、更新申請時に改めて審査されます。 そのため、証明書を持っていても、税金の滞納などがあれば不許可になる可能性は十分にあります。
ケース2:事前に「就労資格証明書」を取得していない場合
これが最も注意を要する、難易度の高いパターンです。この場合、更新申請は「在留期間の更新審査」と「新規の在留資格審査」が同時に行われるようなものだとお考えください。
入管は、以下の全てをゼロから審査します。
ご自身の在留状況: 納税、社会保険、届出義務※、法律遵守、そして上記の「空白期間」の理由など。
新しい会社の安定性: 事業内容、財務状況(決算書など)は健全か。
新しい職務内容との整合性: 新しい仕事が、本当に「技術・人文知識・国際業務」の範囲内か。そして、その仕事内容とご自身の学歴・職歴との間に関連性があるか。
したがって、このケースでの提出書類は、入管ホームページに記載されている単なる更新用のリストだけでは全く不十分です。「在留資格変更許可申請」の際に求められるような、新しい仕事内容や新しい会社の事業内容をしっかり説明した雇用理由書、登記事項証明書や決算報告書、ご自身の卒業証明書や職務経歴書といった、仕事の適法性を一から立証するための資料が必須となります。
まとめ
今回は、転職を伴う「技術・人文知識・国際業務」ビザの更新について解説しました。
もし、あなたが転職後で、「就労資格証明書」を取得しないまま更新時期を迎えてしまったのであれば、その申請は非常に慎重に進める必要があります。
それは新しい仕事に対するビザの適格性を、過去の在留状況も含めてゼロから証明し直す手続きだからです。入管ホームページに記載されている最低限の書類を提出するだけでは、情報不足で不許可となるリスクが非常に高いと言えます。
なぜその会社に転職したのか、新しい仕事がいかにご自身の専門性を活かすものであるか、そして会社がいかに安定しているか。これらの点を、説得力のある理由書と客観的な証拠書類をもって、自ら立証していかなければなりません。
ご自身のケースで何を追加で証明すべきか、少しでも不安に感じた方は、ぜひ一度専門家にご相談いただくことを強くお勧めします。
※転職のケースで届出義務として重要なのは転職の際の外国人本人による「所属機関等に関する届出」です。退職時と入社時に忘れずに届出をしてください。会社側は「所属機関等による届出」と「雇用状況に関する届出」が必要ですので、こちらについてもお忘れなく!
【文責:行政書士わかばやし事務所 代表 若林 しずか】