在留資格の審査とは?入管「審査要領」から読み解く、許可・不許可の判断基準
- しずか 若林
- 4 日前
- 読了時間: 5分

「在留資格の申請に必要な書類は、すべて指示通りに集めた。でも、本当にこれだけで許可されるのだろうか?審査官は一体、この書類のどこを見て、何を考えて、許可か不許可かを決めているのだろう?」
こんにちは!行政書士の若林しずかです。 在留資格の審査プロセスは、申請者様にとって、中身の見えない「ブラックボックス」のように感じられ、大きな不安の原因となっているかもしれません。
しかし、出入国在留管理庁(入管)の審査官は、個人の感情やその場の雰囲気で判断を下しているのではありません。彼らは「審査要領」と呼ばれる、非常に詳細な内部ルールブックに基づいて、一つひとつの申請を厳格に審査しています。
今回は、この「審査要領」の基本的な考え方を紐解きながら、審査官があなたの申請のどこを見ているのか、そして、許可・不許可の判断基準はどこにあるのか、その核心に迫ります。
審査の心構え:入管の基本姿勢とは?
審査要領の第一編には、まず審査官の心構えが示されています。その目的は「我が国の外国人受入れ政策・方針に合致する外国人の円滑な受入れと、合致しない外国人の確実な受入れの拒否」を達成することです。
この目的を達成するため、審査は以下の3つの基本的な流れで行われます。
的確な事実認定を行う
認定した事実を法律・規則にあてはめる
適切な処分を行う
つまり、審査とは「提出された書類が本物で、書かれている内容が事実かどうかを確認し(事実認定)、その事実が、法律や省令で定められた許可の条件をクリアしているかを判断し(あてはめ)、最終的な決定(処分)を下す」という、極めて論理的なプロセスなのです。
審査官は、あなたの申請のココを見ている!4つの判断基準
では、具体的にどのような基準で「法律・規則にあてはめて」いるのでしょうか。審査要領によれば、主に以下の4つの点が厳しくチェックされます。
1.在留資格該当性
「申請された活動内容は、本当にその在留資格に当てはまりますか?」
これが、最も基本的な審査項目です。在留資格は、その種類ごとに「日本で行うことのできる活動」が法律で厳密に定められています。申請する活動が、その在留資格の定義に合致しているかどうかが問われます。
《例1:「技術・人文知識・国際業務」の場合》 この在留資格は、「専門性」が問われます。
職務の専門性: まず、任される仕事内容が、工場のライン作業のような「単純労働」ではなく、専門的知識・技術を要する業務である必要があります。
学歴・職歴との関連性: その上で、本人の学歴(大学での専攻など)や職歴と、その専門的な仕事内容が関連している必要があります。ただし、この関連性の審査は、大学卒業者の場合は比較的柔軟に、専門学校卒業者の場合はより厳格に判断される傾向があります。
《例2:「技能」の場合》 この在留資格は、「熟練した技能」が問われます。
外国料理の調理師であれば、原則として10年以上の実務経験が求められるなど、特定の分野における長年の経験と、それによって培われた高い技術レベルを証明する必要があります。
《例3:「日本人の配偶者等」の場合》 この在留資格は、仕事の能力ではなく、「身分関係の信憑性」が問われます。
偽装結婚ではないこと、そして、夫婦として安定した生計を営んでいけることを証明する必要があります。
このように、在留資格ごとに「該当性」の審査ポイントは全く異なります。
2.上陸許可基準適合性
「その活動を行うための、国が定めた具体的な基準を満たしていますか?」
これは、主に就労関係の在留資格に適用される、より詳細な基準です。例えば、「技術・人文知識・国際業務」では、
業務に関連する分野の大学を卒業しているか、または10年以上の実務経験があるか(学歴・職歴要件)
日本人と同等額以上の報酬を受け取るか(報酬要件) といった、法務省令で定められた具体的な基準を満たす必要があります。
3.事業の安定性・継続性
「会社(受入れ機関)は、この外国人を安定して雇用し続けられますか?」
これは、会社側が審査されるポイントです。入管は、提出された決算書や事業計画書から、会社の経営基盤を評価します。赤字決算や債務超過の場合、あるいは設立間もない会社の場合は、事業の継続性に疑義があるとして、慎重な審査が行われます。
4.申請内容の信憑性
「提出された書類や、書かれている内容は、本当に事実ですか?」
審査官は、申請内容が虚偽でないか、提出された書類が偽造されたものでないかを厳しくチェックします。 例えば、
雇用契約書に書かれた給与額と、会社の賃金台帳の金額が違う
申請した会社の事務所を訪問したら、事業を行っている実態がなかった といった場合は、「申請内容に信憑性なし」として不許可になります。
まとめ:審査とは、入管との「論理的な対話」である
ここまで見てきたように、在留資格の審査は、決して曖昧なものではなく、法律と内部ルールに基づいた、極めて論理的なプロセスです。
だからこそ、私たち申請する側も、
なぜ、この在留資格に該当するのか
なぜ、許可の基準を満たしていると言えるのか
なぜ、この会社は安定していると判断できるのか といった点を、客観的な証拠書類と、熱意ある理由書によって、論理的に、そして誠実に「立証」していく必要があります。
審査官との、この「書類を通じた論理的な対話」を、いかに説得力を持って行えるか。それが、許可を勝ち取るための唯一の方法です。
もし、ご自身の申請に少しでも不安な点があれば、ぜひ一度私たち専門家にご相談ください。お客様の状況を丁寧にお伺いし、許可の可能性を高めるための最善の方法を、一緒に考えさせていただきます。
【文責:行政書士わかばやし事務所 代表 若林 しずか】
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