【法律用語解説】「在留資格」とは?「ビザ(査証)」との決定的な違い
- しずか 若林
- 6 日前
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更新日:5 日前

在留資格とビザの違いについて教えて欲しい。
こんにちは!行政書士の若林しずかです。 外国人採用を検討されている経営者様から、このようなご相談をよくいただきます。多くの方が日常的に使っている「ビザ」という言葉。実は、外国人が日本国内で就労する場合、その活動の根拠となるのは「ビザ」とは少し違うものであることをご存知でしたでしょうか?
この違いを正確に理解することは、外国人ご本人のみならず、外国人を雇用する企業様にとっても、コンプライアンスを守り、手続きをスムーズに進める上で非常に重要です。
今回は、この「ビザ」と「在留資格」の決定的な違いについて、入管の公式な考え方も踏まえて、分かりやすく解説します。
結論:会社の「内定通知書」と「社員証」くらい違う!
この2つの関係を、会社の人事に例えるなら、
ビザ(査証) = 入社前(日本入国前)に受け取る「内定通知書」
在留資格 = 入社後(日本入国後)に交付される、活動内容が書かれた「社員証(=在留カード)」
と考えると、その役割の違いがイメージしやすくなるでしょうか。
「ビザ(査証)」とは?~入国のための推薦状~
「ビザ(査証)」とは、法律上、「その外国人が持っているパスポートが有効であり、かつ、その外国人が日本へ入国・滞在することに支障がない」ということを、海外にある日本の大使館・領事館が確認した証として発行するものです。 つまり、あくまで「日本への入国審査を申請するための、推薦状」のような役割です。
誰が発行する?: 外務省(海外の日本大使館・領事館)
いつ使う?: 日本の空港などで行われる「上陸審査」の際に、入国審査官に提示します。
役割の終わりは?: 原則として、一度上陸審査を通過すると、そのビザの役割は完了します。日本に住んでいる間、日常的に使うことはありません。
証明の形式: パスポートに証印(シールまたはスタンプ)が貼付されます。
ただし気を付けなければならないのは、査証を受けた外国人はそれだけで本邦への上陸許可を保証されるものではないということです。最終的な上陸の許可は、空港の入国審査官が判断します。
「在留資格」とは?~日本での活動の根拠~
「在留資格」とは、外国人が日本に在留し、一定の活動を行うことができる法的資格のことです。これは法務省(出入国在留管理庁)が管轄します。
誰が許可する?: 法務省(出入国在留管理庁)
いつ使う?: 日本に中長期間滞在する間、常にその資格に基づいて活動します。
証明の形式: 在留カードが交付されます。
「技術・人文知識・国際業務」であれば専門職として、「留学」であれば学生として、「日本人の配偶者等」であれば日本人と結婚した者として、といったように、それぞれの在留資格ごとに、日本で行うことのできる活動の範囲が定められています。 ややこしいのは、一般にこの在留資格のことを「ビザ」と呼ぶことが多いためです。 「配偶者ビザ」とか「就労ビザ」などと一般に呼んでいるのは、正確には在留資格なのです。手続き的にも、普段「ビザの更新」や「ビザの変更」と呼んでいるものは、法律上は、この「在留資格」の「在留期間更新許可申請」や「在留資格変更許可申請」を指しています。
【重要】経営者・採用担当者様が確認すべきは「在留カード」
この違いを理解すると、外国人の方を雇用する際に、本当に確認すべきことが見えてきます。 それはパスポートに貼られた、既に役割を終えた古いビザ(査証)ではなく、ご本人が常に携帯している「在留カード」に記載された「在留資格」の種類と、「就労制限の有無」です。
在留カードは、その方が適法な在留資格をもって日本に在留することを証明する「証明書」であると同時に、在留資格の変更や更新がなされた際に交付される「許可証」としての性格も有しています。
「技術・人文知識・国際業務」と書かれていれば → 専門的な仕事内容でのみ雇用可能
「永住者」「日本人の配偶者等」と書かれていれば → 職種に制限なく、日本人と同じように雇用可能
「留学」「家族滞在」と書かれていれば → 原則就労不可(ただし、カード裏面の「資格外活動許可」があれば、週28時間以内のアルバイトが可能)
このように、確認すべきは「在留資格」であり、それによって「何ができるか」がすべて決まります。
まとめ
ビザ(査証): 海外で発行される「入国用の推薦状」。パスポートへの証印によって、旅券の有効性と入国への推薦を証明します。
在留資格: 日本国内で許可される「活動内容の許可証」。その証明として「在留カード」が交付されます。
この違いを正確に理解し、採用の際には「在留カード」の記載内容を確認することで、不法就労助長のリスクから会社を守ることができます。
ご自身のケースで、この在留資格のことでご不明な点があれば、いつでも私たちにご相談ください。
【文責:行政書士わかばやし事務所 代表 若林 しずか】
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