「真面目に働いていれば大丈夫」は間違い?ビザ更新で不許可になる意外な落とし穴【更新申請のきほん②】
- しずか 若林
- 7月11日
- 読了時間: 5分
更新日:7月18日

皆さんこんにちは。行政書士の若林しずかです。
前回の記事では、在留資格の更新は「これまでの在留生活の成績表」のようなものだとお伝えしました。では、具体的にどのような基準でその「成績」が判断されるのでしょうか。
「真面目に働いていれば大丈夫」と漠然と考えていると、思わぬところで足をすくわれるかもしれません。実は、法務省は、更新を許可するかどうかを判断するための具体的な「在留期間の更新の許否に関するガイドライン」を公表しています。
今回は、この公式ガイドラインで示されている「8つの審査ポイント」を、一つひとつ具体例を交えながら、誰にでも分かりやすく解説していきます。ご自身の状況と照らし合わせながら、ぜひ最後までご覧ください。
解説!更新審査8つのチェックポイント
在留期間更新が許可されるためには、「更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があると法務大臣に判断される必要があります。その判断の際に考慮されるのが、以下の8つのポイントです。
① 在留資格への該当性
まず、「その在留資格の前提となる身分や契約関係が、今も存続しているか」という大前提が問われます。
具体例:
「日本人の配偶者等」: 日本人配偶者と法律上の婚姻関係が継続していること。
「留学」: 在籍校の学生としての籍が存続していること。
「技術・人文知識・国際業務」: 雇用主や業務委託者との間で専門的業務を担う契約が継続していること
② 上陸許可基準への適合性
これは少し専門的ですが、「日本に入国する際や在留資格を変更した際にクリアした専門的な基準に、更新時も引き続き適合しているか」という点です。
具体例:
「医療」の医師や看護師: その業務に必要な日本の国家資格・免許を、有効に保持し続けていること。
「経営・管理」: 会社の事業が、法令で定められた基準(事業所の確保など)を満たし続けていること。
③ 許可された活動を実際に行っていること
これが非常に重要なポイントです。単に籍がある、契約があるというだけでなく、「その在留資格にふさわしい活動の実態があるか」が厳しく見られます。
具体例:
「日本人の配偶者等」: 法律上の婚姻関係があるだけでなく、実際に同居し、夫婦として互いに協力し扶助しあって社会通念上の夫婦共同生活を営んでいる実態があるか。正当な理由のない長期の別居などは、活動の実態がないと見なされる可能性があります。
「留学」: 学校に在籍しているだけでなく、出席率や成績が良好で、真摯に勉学に励んでいる実態があるか。出席率が著しく低い場合などは、本来の活動を行っていないと判断されます。
「経営・管理」: 会社の経営者として、きちんと経営活動に従事している実態があるか。経営者が自ら現場で単純作業ばかりしているような場合は、経営活動の実態がないと見なされることがあります。
「技術・人文知識・国際業務」:専門性があり、学歴職歴に関連性がある業務を実際に行なっているか。現場の単純作業にあたっている場合などは許可された活動を実際に行なっていないと判断されます。
④ 素行が善良であること
日本の法律を守り、社会の一員として良識ある行動が求められます。
具体例:
法律違反: 窃盗や傷害などの犯罪で有罪判決を受けた場合はもちろん、たとえ軽微であっても繰り返しの法律違反は「素行不良」と見なされます。
交通違反: 軽微なスピード違反や駐車違反でも、何度も繰り返していると問題視されることがあります。
資格外活動違反: 特に留学生や家族滞在の方で、許可されたアルバイトの時間(原則週28時間以内)を超えて働くことは、素行不良と見なされる典型例です。
⑤ 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
日本で安定して生活していけるだけの経済的な基盤があるか、という点です。公的な援助に頼らず、自立して生活できることが求められます。
具体例:
就労系の方: 毎月の給与や年収が、安定した生活を送るのに十分な水準であることが重要です。
配偶者・家族滞在方: 扶養者の収入によって、世帯全体で安定した生活が送れるかが審査されます。
⑥ 雇用・労働条件が適正であること
これは主に、雇用されている側の外国人を守るための視点です。会社が法律を守り、適正な条件で雇用しているかが確認されます。
具体例:
雇用契約書通りの給与が支払われていない、社会保険に未加入である、など。
⑦ 納税義務を履行していること
日本に住む一員として、税金をきちんと納めていることは絶対条件です。
具体例:
住民税: 役所にきちんと届け出を行い、毎年送られてくる納付書に従って納税しているか。更新申請では、納税証明書の提出が必須です。1年でも滞納があると、更新は原則として許可されません。
⑧ 入管法に定める届出等の義務を履行していること
入管法で定められた届出を、決められた期間内に行っているかという点です。うっかり忘れがちな手続きも含まれるため、特に注意が必要です。
具体例:
引っ越しをした際の「住居地の届出」(14日以内に市区町村役場へ)。
会社を辞めたり、新しい会社に転職したりした際の「所属機関に関する届出」(14日以内に入管へ)。
まとめ:ガイドラインは「当たり前のルール」の再確認
いかがでしたでしょうか。
この8つのポイントは、決して特別な要求ではありません。「法律を守り、税金を納め、許可された活動を誠実に行い、決められたルールを守る」という、日本で暮らす上で当たり前のことを求めているものです。
日々の生活でこれらのポイントを意識することが、結果として1年後、3年後のスムーズな在留期間更新へと繋がります。もしご自身の状況で少しでも不安な点があれば、放置せずに専門家へご相談ください。
【文責:行政書士わかばやし事務所 代表 若林 しずか】


